免疫細胞自体が感染していた 猫コロナウイルスとロングコロナ
- fukushimadiaryoffi
- 1月23日
- 読了時間: 3分
マクロファージの外側で起きていたこと
――猫のFIP研究が示した「免疫細胞感染」という視点
年が明けてから、ロングCOVIDをめぐる論文を読んでいて、個人的にいちばん関心を呼んだ研究の一つが、今回紹介する猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)の論文です。
FIPは、猫コロナウイルスが引き起こす致死的な疾患で、長年「マクロファージに感染する病気」として理解されてきました。免疫学の教科書的にも、FIPの病態は「感染したマクロファージが全身に炎症を広げる」というモデルで説明されてきました。
ところが今回の研究は、その前提を決定的に崩します。
T細胞とB細胞の中に、ウイルス
この研究では、自然発症したFIPの猫から腸間膜リンパ節を採取し、
単一細胞RNA解析
多重免疫染色
in situハイブリダイゼーション
を組み合わせて、リンパ節の中で何が起きているかを直接観察しています。
その結果、研究者たちは次の事実を確認しました。
ウイルスRNAとウイルスタンパク質がT細胞(CD3⁺)とB細胞(CD20⁺)の中に存在
さらに重要なのは、ウイルスのサブゲノムRNA(sgRNA)がT細胞内で検出されたこと
sgRNAは、コロナウイルスが細胞内で実際に複製を行っている証拠です(去年のレポート参照)。つまりこれは、
「免疫細胞がウイルスを駆逐」
ではなく
免疫細胞そのものが、ウイルスの宿主になっていたという意味です。
なぜこれは重要なのか
ここが、この論文の核心です。
免疫細胞、とくにT細胞やB細胞は、
長寿命で
全身を循環し
記憶を形成する
という性質を持っています。
もし、こうした細胞がウイルスに感染し、しかも治療後も少数が生き残るとしたらどうなるか。
免疫記憶が歪む
正しく反応できなくなる
再燃や慢性炎症が起こる
これは、単なる「炎症が残った」状態とは違います。
免疫システムそのものが、内側から書き換えられてしまう。
FIPで見られるリンパ球減少、免疫不全、治療後の再発傾向は、この視点を取ると、非常に筋が通ります。
ロングCOVIDを考えるときに浮かぶこと
この論文は猫の病気を扱っています。しかし、読んでいてどうしても頭をよぎるのは、人間のロングCOVIDです。
ロングCOVIDでも、
T細胞やNK細胞の長期低下
免疫の反応性低下
抗原が消えた後も続く炎症
が繰り返し報告されています。
「ウイルスがどこかに残っているのか?」という問いに対して、このFIP研究は、「場所」ではなく「細胞」を見る視点を提示しています。
組織の奥深くではなく、免疫細胞そのものが変質している可能性。
それは、単一の抗ウイルス薬や単一の抗炎症薬で解決しない理由でもあります。
見えないところで起きていること
FIPは、リンパ節という「免疫の中枢」で起きている病気です。ロングCOVIDもまた、表に見える臓器障害より前に、免疫システムの深部で何かが壊れているのかもしれません。
今回の論文の凄みは、それを想像ではなく、実際の細胞レベルで見せた点です。
マクロファージの外側で、T細胞とB細胞の中で、コロナウイルスは思ったより深く入り込んでいました。
「治ったはずなのに、戻らない理由」を考えるとき、この視点は、今後避けて通れなくなる気がしています。






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