今進行中の新しい分析では、「認知疲労」、つまり頭脳労働を続けて集中力やワーキングメモリが切れたときに脳はどうなっているのかというところを研究しています。
本日朝、この「頭の疲れ」の状態を説明するモデルが陽子のレベルまで突き詰められたのでブログで報告しています。
通常は、ニューロンの中のミトコンドリアがグルコースを使ってATPを生産し、脳のエネルギーを提供しています。しかし、実は「頭を使う」という作業は文字通りニューロンの激しい発火を要します。具体的には、Na+やK+をニューロンから出し入れするためのポンプ(他にも複数種あります)を高速で動かしています。このため、ニューロンには筋肉と同様に大変な負荷がかかっており、頭を使うと筋肉と同様に疲労します。認知疲労は、気持ちの問題ではなく文字通り疲労なのです。この段階を過ぎてもなお頭を使う場合、脳はニューロンの周辺にある別の部位から代謝老廃物を輸送して、ニューロンに届けます。これはグルコースではありませんが、非常用エネルギー源としてミトコンドリアは使うわけです。しかしこれは代謝老廃物なので、副産物をたくさん生み出します。その結果の一つがニューロン内の酸性化です。恒常性を維持するため、体にはpHを維持するための仕組みが多くありますが、ニューロンの酷使はこの速度を上回るペースで酸性化を起こしえます。これにより、ミトコンドリアのATP生産が滞るだけではなく、ミトコンドリア自体にも損傷が生じることがあります。
たとえると、ニューロンが、働くためにエネルギーを必要とする小さな工場のようなものだとします。 この工場は、ミトコンドリアと呼ばれる体内の「発電所」と呼ばれるものを使用してエネルギーを生成します。 エネルギーを生み出すために、これらの発電所は内部を清潔にし、バランスのとれた状態に保つ必要があります。
このたとえでは、「陽子」は発電所のエネルギー生成を助ける小さな火花のようなものです。 しかし、火の粉が飛びすぎると、ちょっとした混乱が生じる可能性があります。 通常、発電所はこれらの火花を非常に巧みに利用してエネルギーを作り出します。 しかし、発電所の外まで火花が多すぎると、発電所が正しく仕事をすることが難しくなり、エネルギーを十分に生み出すことができなくなるわけです。
この工場の壁には、恒常性を維持するための門番がいます。 この門番は、余分な火花を移動させて散らからないように掃除するのに役立ちます。 発電所内で火花が多すぎないようにし、すべてがスムーズに進むようにします。
グルコースが足りなくなると周辺の部位から燃料が運び込まれます。しかし、場合によっては、この燃料の運び方によっては大量の火花が飛び散り、燃料の清掃を続けるのが困難になることもあります。 これにより、レモネードを飲みすぎたときのように、工場全体 (脳細胞) が酸性になりすぎて、工場が適切に機能することが困難になります。
火花 (陽子) が多すぎると、私たちの小さな工場 (脳細胞) は明晰に考えることができなくなります。 これにより、本当に疲れているときのように、動きが遅くなったり、霧がかかったように感じたりすることがあります。 これは、病気のときや十分な休息が取れていないときに一部の人が感じるもので、この状態がまさに「ブレインフォグ」と呼ばれるものです。
つまり、非常用エネルギー源まで使い切って頭が朦朧とする状態は、コロナウイルス感染による長期障害で観察されるブレインフォグと機序を同じくしており、この状態では脳細胞の中がレモネード化してしまっていると言えます。当然のことながら、この状態を継続させたり繰り返し発生させていると、ミトコンドリアの死亡や細胞損傷が起こります。脳を筋肉と取り違えて負荷をかけすぎると、神経変性が起こるということです。
今後は、この解決策がないか調査していきます。
Xをフォローさせていただき、COVID19をはじめとして、種々の情報をありがたく拝読しておる、主に発達障害の栄養学的側面に興味を持つ小児精神科医です。
投稿の内容と、実体験は矛盾がないように感じています。
さらに詳細な検討を行いたいので、元文献などをお示しいただければ幸いです。