リュック・ベッソン監督のルーシーや、ブラッドリー・クーパー主演のリミットレスなど、脳の潜在力を100%活かす薬を飲んで超人的な力を発揮する主人公を題材にした映画は少なくありません。確かに、人間は霊長類で最も大きい脳を持っているにも関わらず常に一部分ずつしか使用できないというのは不便です。
今週配信した【脳機能拡張】のレポートはこれらの映画をヒントにしたわけではありませんが、認知機能や知性を向上させる方法を見つけるのは長い間の目標でした。脳細胞はよく筋肉と比較され、たくさん使うと疲労し、回復後に少し強くなる、というのはよく言われています。しかしこれは必ずしも正確ではありません。脳が消費するエネルギー量は頭を使っていてもいなくても常にほぼ一定だからです。言い換えると、なぜ人間は余剰エネルギーを脳で燃やせないのか、という質問に答えるための研究でもありました。
この質問に対しては、答えがなく、ほとんど研究もされていないし、そもそも問う人があまりいません。脳を扱うのは主に医学であり、医学は病気の人を対象にしているからです。病気の人の状態を健康な状態に上げることが目的で、健康な人の状態をさらに上げるのは医学の仕事ではないからです。しかし、健康な人の状態ですら上げられるのであれば、病気の人も治せるはずではないでしょうか。また、常にジムで鍛えている人が多少入院してもまだ普通の人と同じくらいの筋力でいられるように、仮に病気になってもまだ十分な認知レベルを維持できるようになるのではないでしょうか。実際、インターネットで調べたり専門家に聞いてもこの問いに対する答えはあまり見つからないでしょう。一番多いのは、健康的な食事と定期的な運動を心がけること、という程度です。しかし、たとえばプロテニスプレーヤーの平均知能指数は109で一般人とほとんど変わらないのです。これはなぜなのか、というところからこの研究はスタートしました。
おそらく答えはエピジェネティックなところにあるだろうという推測から始めましたが、やはり最初が一番大変でした。道のないところにAIと二人で手探りで進んでいく感じです。最初の頃は、あまり面白くないことばかり見つかりました。たとえばにおいなどの感覚細胞が認知機能を刺激する。あるいは、完全な暗闇状態に定期的に入ることで視覚を通して認知機能が刺激できる、などです。他にも、カルシウム豊富な魚が良い、というのは良いとして、電気刺激が認知機能を向上させる、などです。AIも最初が一番大変、と言っていたので、最初の頃に出した情報はあまり使えないということを自覚しているのでしょう。他にも、シータ波を刺激するヘルメットや、環境汚染から身を守ること、などが候補に上がりました。しかし環境汚染から守るのはあくまで現状維持の施策であって、健康な人がそれ以上を実現するための方法ではないでしょう。最終的に、組み合わせて使われることのほとんどない植物抽出物3種類を合わせるというところに答えが見つかりました。そのうちの1種類は聞いたことがあると思いますが、他の2種類については初耳という人が多いと思います。この2種類のうちの一つは、チベット仏教の僧侶が長い経典を覚えるために使っていたという研究もあります。なぜ3種類を組み合わせるのか、というのはまさに、なぜ余剰エネルギーを脳で燃やせないのか、という問いと同じ意味で、レポートの中で答えが待っています。
結局、運動などをすると脳神経細胞の再増殖を促すタンパク質が増えるのですが、問題はこの「質」で、この「質」は遺伝子のどれだけの部分が「オン」になっているかというところと相関するのです。人間は生きていくうちに、化学汚染物質や不健康な食生活、ストレスなどでこの大切な遺伝子をどんどんオフにしていき、まともなタンパク質を作れなくなっていきます。これを悪利用しているのがまさにコロナウイルス(SARS-CoV-2)で、免疫に関わる遺伝子の部分をオフにして壊れたタンパク質ばかり生成するようにしてしまうのです。PTSDを負った患者の体内では、このタンパク質の設計図の遺伝子が大規模にオフになっており、オフの部分の多さが鬱などの症状の強さと相関していることが分かっています。逆にいうと、コロナウイルスはPTSDなどとも同じ作用を遺伝子に起こしています。なので、今回見つけた3種類の物質はこれと全く逆のことをします。ブレーカーが落ちてしまった配電盤を開けて、一度全てオンに戻すのです。子供の状態に戻ります。そのため、大きな変化が毎日起こるでしょう。また、脳に良いとされているマグネシウムや亜鉛のように代謝で利用されて減るものではないので、人生で1度だけやれば十分です。僕自身に起こった変化をまとめてみます。
2日目:集中力が無限に続く感覚
3日目~7日目:集中力のピークが大きくなるが、そのあと疲れやすくなる
8日目:1年以上前に見た夢の内容が突然脈絡なくフラッシュバックする。古い記憶が新しい記憶のように頭の中に並び、記憶のタイムラインがなくなった感覚が6時間継続する。(その後古い記憶は再び徐々に沈殿)。対象なき怒りの感覚が溶けて流れ去っていく。
9日目:無限の集中力
10日目:感謝という感覚を発見する。これまで絶対に感謝できなかった人にも、心の中で感謝できるようになる。
11日目:プラス思考が爆発する。生活のあらゆる場面で良い考えが頻繁に浮かぶ。
13日目:怒って当然の状況で怒りが出てこないことに気がつく。
14日目:5年前に道で見つけた「なんらかの原因で首がネジ曲がってしまっているのにまだ生きており、必死に前を向こうとしていた鳩」の記憶が突然蘇り、怒りや苛立ちの感覚をその映像が邪魔し、慈悲の感情に変化させてしまう。誰しも皆、この鳩と同じなのではないかと思うようになる。
26日目:IBSと同時に腸の蠕動運動が活発化する副作用が発生。
28日目:IBSが治るのと同時に副作用も消失。
という状態でした。これは30日コースです。
7日目までの疲れやすくなったときは、おそらくブレーカーを全て上げて煌々と電気をつけたのにも関わらず、電気の契約量を更新していなかった、という状態です。このタイミングではよく休むことが大切です。8日目のフラッシュバックの体験は少し変わっていますが、シミュレーション通り海馬でシナプスの再増加が始まったことから、それまであまり他と繋がっていなかった記憶の部位に新しいシナプスが接続された結果だったと思います。この方法ではもちろんシナプスを増やすだけではなく、ニューロンの再増加まで続きますが、シナプスのプルーニングも起こるはずです。通常だと生後8ヶ月から始まって20代後半で終わるはずですが、再び起こると思われます。プルーニング作業はレム睡眠中に進むので、やはりよく眠るようにしましょう。26日目の副作用は、おそらく植物抽出物の一つがアセチルコリンを増加させるのが主な原因です。アセチルコリン増加の効果については今回のレポートのテーマとあまり関係ないので触れませんでしたが、随意筋の運動性を高めます。外部アドバイザーの栄養士が脳機能拡張の方法を試し始めたとき、ランニングが急に速くなったと言っていました。おそらく中枢神経系に無自覚で起こっていた微弱な炎症が静まったのと、睡眠の質の向上、そしてアセチルコリンの影響だと思います。
毎朝、ルーマニア語のリスニング訓練のために、ダニエル・チルツという生産性向上のコーチングをしている人のユーチューブを見ています(発音がクリアで早口なため)。ある朝、ダチアナ・サバウという栄養士との対談動画がおすすめに流れてきて、聞いていたらこれまでの当社のレポート内容とほとんど同じことを言っていたので即日連絡を試み、外部アドバイザーに招きました。ダチアナ・サバウ先生も、脳に栄養を送って認知機能を向上させる、ということを目的に研究と実践をされているので、これにエピジェネティックな視点を加えたら面白くなるのではないかと考えたからです。先生には、随時研究で見つかったことを報告し、同意できない部分はその旨を忌憚なく伝え、コーチングなどで得た実社会からの知見があればそれを添えてもらえるようにお願いし、素晴らしい貢献をしていただきました。
脳機能拡張の30日のコースを終えて、率直に言うと「全く別人」になった感覚があります。考え方、感じ方、行動パターンなどが朝起きた時から今までとまるで違いますが、悪い感覚ではありません。仕事においては集中力が比較にならないほど高まって、インターホンの電子音が鳴り始めたあと、次の電子音が鳴るまでが異様に長く感じられます。
このレポートの裏のテーマは「時間」です。人間は時間を操作することができません。しかし、認知機能を高めることでその進みを遅くすることは出来ます。1分を10分に感じたり、時計の秒針が止まったように感じた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。脳時間がはやまれば、私達はそれだけ”長く”生きられます。
このレポートに書いてあることは、まさにコロナウイルスがしていることの逆です。自分で自分の遺伝子の発現を調整し、潜在能力を解き放つ分析を、これからは「バイオハック」と呼んでいきたいと思います。また、以前、コロナウイルスがオフにしてしまった遺伝子の発現状態は、遺伝するということをコロナウイルス通信で書きました。今回はその逆で、これらの物質でオンに戻った発現状態は子孫に受け継がれる可能性があります。
コロナウイルス長期障害からの認知障害を負われた方は、大変な苦労をされていると思います。以前、脳細胞再生のレポートで機序や対応法を説明しましたが、複雑だったのと時間がかかるという難点がありました。今回脳機能拡張のレポートでその点を克服できたことを幸運に思います。このレポートが生活改善のお役に立てれば幸いです。
現在、外部アドバイザーの先生のクライアントにもこの方法を試してもらっています。動脈瘤を患っていますが、動脈瘤への悪影響や薬の飲み合わせの問題はないという分析だったので、結果を楽しみに待っています。
「この方法」という呼び方で通してきましたが、AIはM.E.N.D. (Means of Early NeuroDegeneration treatment)と名付けています。
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