前回の投稿では、コロナウイルスがいかにしてインターロイキン6とSTAT3伝達経路の相乗作用を引き起こして免疫不全症状を起こすかについて簡単に説明しました。現在、最大の問題は、これは子孫に遺伝するか、ということです。
コロナウイルスが引き起こす「遺伝子のオフ作用」はメチル化と呼ばれ、伝統的にこれは修復不能と信じられてきました。近年、この修復プロセスは自然に起こりうることが確認されていますが、細胞分化の際のタイミングなどのいくつかの条件があります。そして、遺伝子がオフになっているという設定は生殖細胞を伝わって子孫に遺伝します。今回は、免疫不全を引き起こす何の要因が遺伝しうるのかについて少し紹介したいと思います。
前回は、免疫不全に至る炎症がどのようにして発展するかを説明しましたが、なぜ抗炎症反応が起こらないのかについては書いていませんでした。これについては現在までほとんど研究がされておらず、メカニズムも理由もよく分かっていません。当社はmir-181aというマイクロRNAがコロナウイルスによって「オフ」にされていると仮定すると、非常に多くの症状をシンプルに説明できることを発見しました。マイクロRNAはメッセンジャーRNAとは異なります。これは、遺伝子の発現の度合いを調整する特殊なRNAで、わずか21~25塩基程度しかなく、多くの場合働きが謎に包まれています。コロナウイルスは、遺伝子の発現度合いを調整するマイクロRNAの発現をオフにすることで、このRNAでACE2の生成が抑制されることに対抗します。これはおそらく、ACE2受容体が豊富に分布する肺よりも、主に甲状腺で起こると推測できます。これにより、コロナウイルス感染後に甲状腺疾患が起こりやすいことや、既に甲状腺疾患を持っている人はウイルスによる死亡率が約20%高くなることが説明できます。mir-181aはインターフェロンを抑制し、またその一方でACE2の生成も抑制する働きを持ちます。コロナウイルスはインターフェロンを飲み、その代わりに細胞への侵入口を減らす作用を起こすmir-181aを封殺することを選びます。
Mir-181aにはACE2抑制などの他にも抗腫瘍作用などの多くの機能があるため、ここで大きな問題が生じ始めます。まず、直接的な機能の一つであるインターロイキン6などを抑制する作用が失われます。これで炎症性サイトカインがブレーキを失い、前述のSTAT3伝達経路との相乗作用を始めます。ここでブレーキを失う炎症性サイトカインには、おそらくIFN-αやTNF-αなども含まれます。さらに、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10などが転写抑制から解放される機会を失います。さらに、本来であればmir-181aは酸化ストレスと戦うNRF2遺伝子と、それを応援するCOX2遺伝子を活性化させるはずですが、体はこの能力も失います。長期障害の様々な症状の背景には、この酸化ストレスがあるということは前から述べている通りです。
さらに、mir-181a は、細胞接着受容体を標的とし、γ-アミノ酪酸 (GABA) などの代謝産物を調節することにより、血液脳関門を通過する遊走を通じて免疫を調節することができるはずですが、体はこの機能も失います。
また、コロナウイルス感染ではマクロファージ異常による炎症も起こりますが、これはM2という抗炎症タイプのマクロファージに関連する伝達経路が、本来はmir-181aによって連携されているためです。
Mir-181a遺伝子のメチル化されやすい部位は、代謝性疾患、冠状動脈疾患、肺高血圧症に関連しています。また、コレステロール輸送において中心的な役割を果たすアポリポタンパク質 Lにも影響すると推測され、成人の脳および神経発達中の脳での細胞プロセスに関連します。これらの遺伝子の感受性が強く、健康な方の親の遺伝子がゲノム刷り込みで抑制された場合、これらの代謝性疾患が先天的に発生する可能性があります。私たちは、さまざまなレベルや臓器(脳、心臓、血管、腎臓など)の代謝単位で、この場合は癌性遺伝子を発生させる、可逆的障害の種、つまりキラートリガーに遭遇しているようです。
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